Night trip for Osaka 〜午後9時から始まる旅〜

583系急行「きたぐに」に乗りたくなって、大阪→京都間の試し乗りをしました。

 関西に来て初めて撮った夜行列車は、寝台特急「日本海」だった。ただ、もう1本、撮りたい列車があった。583系急行「きたぐに」である。当サイトで掲載していた写真があまり良くなかったこともあるが、車両も老朽化しており、今のうちに少しでも乗っておく必要があると考えたからだ。2009年(平成21年)4月18日(土)の夜、私は「きたぐに」の試し乗りをするために、大阪へ向かった。

2009年(平成21年)4月18日(土)

 21時過ぎ、自宅のアパートを出た。京都市の中心部から離れた住宅街なので、歩く人は少なかった。21:20に最寄りの電停から嵐電こと京福電車に乗り、西院(さい)電停で降りた。ここから徒歩3分ほどの場所に、阪急電鉄西院(さいいん)駅がある。駅と言っても、ホームは地下にある。阪急を選んだのは、JRより安く行けるからだ。このまま梅田(大阪)まで直行しても良いのだが、せっかくなので阪急京都本線を制覇することにし、一旦京都寄りの終点である河原町駅まで乗った。梅田までの乗車券(390円)を買い直して、ホームへ。今乗って来た電車が、特急梅田行きとして折り返すようなので、それに乗った。ちなみに、JRだと京都―大阪間は片道540円。自宅最寄りの山陰本線(嵯峨野線)花園駅からだと、820円。阪急に嵐電の運賃200円を加えても590円であり、JRとの差は230円。確かにJRは赤字ローカル線も抱えているので、阪急並みに運賃値下げを行うのは難しいと思われるが、やはり割高感がある。

 発車2分前に乗ったので、席に座れなかった。時刻は22時に近かったが、結構大阪方面へ帰る人が多いようだ。考えてみれば、今日は週末。しかも始発は京都一の繁華街・河原町。今夜も、多くの人々が宴会を開き、電車に間に合った人はこうして夜の阪急に乗り(阪急だけとは限らないが)、終電を逃してしまった人はカラオケボックスあたりで夜を明かすのだろう。この1週間後、河原町近くの木屋町で行われたクラス会の二次会で、実際に私はカラオケボックスで初めて完徹した。完徹カラオケは初めてだったが、歌って夜を明かすのも悪くはないな、と思った。

 さて、特急梅田行きは西院駅を出ると地上に出た。電車の窓が少し開いていて、春の夜風が気持ち良かった。今まで混んだ通勤電車に揺られたのは旅行時くらいしかなかったが、今後はこういうことも増えていくのだろう。車内は途中から空いてきて、ようやく座れた。

 22:40頃、終点の阪急梅田駅に到着した。阪急梅田駅の構内はとても広く、櫛形のホームがずらりと並んでいた。 ついでに今まで乗って来た電車(7300系)と、ホームを挟んで休んでいた3300系を撮影した。

 一旦外に出た。梅田(大阪)駅前はネオンが煌めいていた。今度はJRの駅舎に入り、“京都駅までの”乗車券と急行券を買った。10番乗り場に着くと、「きたぐに」はちょうど入線したところだった。先頭車の近くでは、初老の男性や中年夫婦が何人か撮影していた。発車まで20分以上あったが、「きたぐに」に乗ると思われる客は結構見られた。普通の週末だが、A寝台から普通車自由席まで、様々な料金・設備プランを用意して、利用客のニーズに応えているのがその理由なのかもしれない。到着時刻でも終点の新潟駅には8:29に着くなど、ビジネスにも使いやすいダイヤだ。

 続いて、先頭から後部に向かって撮影を行った。寝台車はカーテンが閉まっていて、外からの様子が分かりにくかったが、グリーン車や普通車自由席は中がよく見えた。だが、グリーン車には誰も乗っていなかった。

 発車時刻が近づいてきたので、普通車自由席である最後尾車両に乗った。昔ながらのボックスで、後ろへ倒れないがクッションは決して悪くない。乗客は思ったよりも多かった。中には若い女性2人グループもいて、チューハイを飲みながら駅弁を頬張っていた。若い人たちの間でも、「きたぐに」の存在が全く知られていないわけではないようだ。席に座って車内をいろいろ見まわしていると、小さなところでいろいろな発見があった。例えば、窓際のテーブル下に設置された灰皿。「JNR」(国鉄)のマークがここにも残っていた。ただ、昨今の風潮を表しているのか、灰皿に禁煙マークが貼られているのは皮肉にも見えた。

   天井に目をやると、ベッドが収納されたままだった。581・583系を改造した419系でもこの構造が見られる。それにしても、昼夜問わず車両を利用すべく、収納式ベッドを考えた人の発想にはただただ頭が下がる。

   「きたぐに」は、23:27に大阪駅を発車し、「鉄道唱歌」のメロディとともに車内放送が始まった。夜の街を「きたぐに」はひた走った。街やすれ違う通勤電車とは隔絶された静けさが車内を支配した。先ほど駅弁を食べていた女性2人組は、座席をベッド代わりにして既に寝ていた。「きたぐに」の車内だけは、確実に夜の雰囲気だった。新大阪駅を出てしばらくすると、車掌さんがやって来た。ここであることに気付いた。本当は山陰本線の花園駅まで乗らなければならないのに、乗車券を京都駅までしか買っていなかったのだ。車掌さんに頼んで、花園まで乗り越すことを申し出た。大阪→京都間は540円、大阪→花園間は820円なので、差額の280円を払った。しかし、よく考えてみれば、京都→花園間は190円なので、直通せずに別に買った方が安上がりだ。確かに大阪→京都間は「大阪電車特定区間」に含まれるので、他の地域に比べて若干運賃設定が安くなっているが、京都から先は含まれていないので、この運賃制度が適用されない。うーむ、事前に研究しておくべきだった……。

 「きたぐに」は、24:00に京都駅に到着した。京都駅から「きたぐに」に乗り込む人も多く、私が降りると同じドアから何人かの人が車内へ乗り込んだ。次の山陰本線亀岡行きは0:04発なので、降りるとすぐに山陰本線のホームに向かった。

 0:04発の亀岡行きは終電とあって、深夜にもかかわらず乗客が多かった。ちなみに、バスはとっくに今日の運転を終えている。丹波口、二条、円町と停まって、0:16に花園駅に到着した。夜のミニ旅行だったが、ますます「きたぐに」に乗りたくなった。もし、夏休みにお金があったら、B寝台を利用してみたいと思う。(おわり)

旅行記&特集へ

トップへ