Cサンライズ瀬戸の夜

これは、関東から九州、四国、中国を股にかけた壮大な物語である。

 発車してすぐ、車内放送が始まった。外は煌びやかなネオンサインが流れ、横を走る山手線や京浜東北線には日常がつまっている。しかし、こちらは静かな静かな寝台特急の車内。ジョイント音より、乗客の話し声や荷物を探る音の方がよく聞こえる。

 壁にもたれかかって夜景を眺める。こんなにきれいな風景を見られるのは、夜汽車の醍醐味だ。夜行の交通機関としては、フェリーや高速バスもある。フェリーは海上から見える沿岸の夜景がとてもきれいで、これはこれで楽しみがある。しかし、高速バスは、道路自体が山間部を走り、都市部でも防音壁が多いため、あまり夜景を楽しめない。単に移動するだけなら安くて良いのかもしれないが、旅好きにとっては味気ない。

 しばらくすると、車掌さんが車内改札にやって来た。事前調査で、シャワーカードやタオルセットを購入できると聞いていたので尋ねてみたら、「後ほどお持ちします」との回答。特にシャワーカードは数が限られているらしく、入手できるか微妙なところだったが、どうやら買えそうだ。5分もしないうちに、シャワーカードとタオルセットを持って車掌さんが戻って来て、510円(シャワーカード300円、タオルセット210円)を払った。シャワーカードは後で使うが、タオルセットはもちろんコレクションにする。乗った人しか直接手に入らないレア物だ。ちなみに、セット内容はタオル1枚だけではなく、歯ブラシも入っていた。

 ノビノビ座席をいろいろ観察してみると、やはりお値段以上の設備だ。例えば、頭上にあるつまみを回せば、空調を調節できる。窓のそばにはミニテーブルがあり、おつまみやペットボトルを置くのに最適だ。使い捨てのコップまで装備されている。照明では、通常使うものに加えて読書灯もある。乗車券と指定席特急料金で乗れるのに、この設備は他の在来線特急列車に比べると、やはり充実している。

 23:30になった。明日は岡山駅で下車するので、早めに寝なければ。その前にシャワールームへ。シャワールームは、A寝台利用者専用のものと、その他の一般利用者用に分かれている。しかし、やはり人数的には一般利用者の方が多いので、なかなか空かない。通路で困っていると、車掌さんが通りがかり「混雑でご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません」と深く頭を下げた上で、「A寝台のところが空いていましたら、そちらをご利用ください」と言ってくれた。私は、柔軟な対応に感謝しながら、A寝台のシャワールームへ。

 A寝台のシャワールームは、幸い空いていた。中は、脱衣場と浴室になっており、間にはもちろん仕切りがあった。使い方は、シャワーカードを脱衣場にある機械に差し込み、あとはスタートボタンを押せばお湯が流れる。使用時間は6分で、浴室のパネルに残り時間が表示される。温度の調節や途中でお湯を止めることも可能だ。シャンプーやボディソープまで装備されている。うーむ、電車の中とは思えない。写真は、カードを挿しこむ機械及びドライヤーと、浴室の様子。

 シャワーを浴びてさっぱりし、服を着ていると、不思議な青いボタンを見つけた。「シャワールーム洗浄ボタン」とあり、押してみるとブシュッという大きな音を立てて、空気がすーっと抜けていった。一瞬、生命の危機を感じたが、空気の力で浴室の清掃を行うらしい。もちろん、空気はちゃんと入ってくるので問題なし。

 ノビノビ座席に戻ると、他の乗客は既に寝ていて静かだった。私もしばらく外を眺めた後、1時くらいに就寝。朝からいろいろあったけど、楽しい1日だった。

2009年(平成21年)8月27日(木)

 目覚めると、外はまだ暗かった。しかし、時計を見れば、5:20過ぎ。しばらくすると、上郡駅に到着した。しかし、定刻より遅れている。何かあったのだろうか。

 同駅を出ると、もう岡山県だ。だんだん外が明るくなってきた。間もなく岡山ということころで、車内放送が流れた。それによると、遅れの原因は「大垣付近での徐行運転」と「加古川付近でこの電車の運転士が、遮断棒が折れているのを発見し、関係箇所に報告した」ためという。寝ている間にいろんなことがあったようだ。

 起きたついでに、車内探検へ。寝ている乗客を起こさないように、車内のあちらこちらを撮影して回った(上からデッキの自動販売機付近、ミニラウンジ、ドア横の洗面所、6号車B寝台個室車の様子)。

 岡山駅には、定刻より12分ほど遅れて到着した。私はここで電車を降りた。冒頭で述べた通り、これから大阪の友人と一緒に瀬戸内海一周の旅に出る。そのため、岡山からいったん大阪まで戻るのだ。その前に、もちろん「サンライズ瀬戸」と「サンライズ出雲」の切り離し作業を撮影。両列車の連結部分付近には、大勢の乗客が集まってきた。

 機関車の切り離し作業に比べると、すぐに作業が終わった。遅れていたので、作業を急いだこともあるのだろう。先に発車する「サンライズ瀬戸」の乗客が車内に戻ったところで発車した。

 「サンライズ出雲」もすぐに発車するので、乗客たちは急いで車内へ。間もなくドアが閉まり、早朝の岡山駅を発車していった。

 さて、先述したように、私はこれから大阪に戻らなければならない。菓子パンを買って113系姫路行きに乗った。発車は7:07。しかし、貨物列車を先行させるために発車が4分遅れた。  

 既に車内は通勤通学の乗客で立ち席が出ていたが、30分も乗れば空席が出て着席できた。網干駅では、223系の新快速に乗り換え、大阪駅に到着したのは9:43。大阪から参加する2人の友人に問い合わせたところ、もうすぐ大阪環状線で着くとのことだったので、私はJR神戸線ホームで待った。乗車位置を教えていたので、迷うことなく出会えた。

 2人は同じ学部の友人で、1人はイリミというニックネームがある。彼は、英語のクラスが同じだった縁で知り合った。もう1人はムトゥというニックネームで、学部のイベントで同じグループになって知り合いに。彼の親せきが、佐賀市に住んでいることでも意気投合。これがそもそもの発端で、今回の旅行につながった。

 10時発の新快速播州赤穂行きに乗車。乗客が入れ替わり、3人とも席に座れた。車内で私がこれまでの旅のことを話すと「別に大阪まで戻って来んくても良かったのに。そのまま(サンライズ瀬戸の終点である)高松まで行って、岡山あたりで合流しても俺たちは全然構へんかった」という返事が。この後は、瀬戸大橋を渡って四国入りするので、確かにそれもありだった。しかし、やはり最初から一緒に旅行した方が良いと思っていたし、乗車券や特急券の費用を安く抑える目的もあった。「サンライズ瀬戸」の全区間乗車は、また今度ということで……。  相生駅では、三原行きの電車に乗り換え。早めに降りる準備をしていたので、こちらも座れた。終点の岡山駅には12:38に到着。快速「マリンライナー」高松行きの発車が迫っているので、乗り場へ急いだ。

D西へ西へ、そして松山

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