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E夜の豊後水道を渡る

これは、関東から九州、四国、中国を股にかけた壮大な物語である。

 木造の雰囲気がよく出ている脱衣場は、多くの利用客でにぎわっていた。時折、日本語以外の会話も聞こえてきた。海外からのお客さんも多いようだ。体を洗って湯船に入る。入れないほど熱くはなく、ちょうど良い感じ。浴室には、絶えず人が出入りする音、体を洗う音、湯船から出る音が響き、独特の騒々しさがあった。20分ほどで上がり、着替えて外に出た。

 本館前を歩く人の数は相変わらずで、カランコロンという下駄の音が温泉街に響く。近くにご当地ソフトクリームを売る店があったので、そこで早速注文。味は、愛媛県だけ伊予柑だった。数分でできあがり、軒先の席で涼みながらソフトクリームをなめる。色は鮮やかなオレンジで、意外とまろやかだった。冷たい物を食べても、体はずっとポカポカしたまま。何とも贅沢な時間だ。

 時刻は19:40を回った。夕食を食べることにしたが、温泉近辺の店は高そうだったので、一旦JR松山駅まで戻ることにした。路面電車に乗る前に、道後温泉電停の土産物屋でモハ50形の模型を購入。1両650円で、棚の上に飾るならちょうど良い大きさ。他にも、松山ならではの土産物が多数並んでいた。

 道後温泉から乗った電車は、最新型のモハ2100形。往路が古参なら、こちらは新車。超低床車で、座席の一部は階段上にあるという面白い車内だった。

 20時過ぎ、松山駅に到着。駅の隣にある「ぐるめ亭」というレストランで500円の定食を発見し、迷わずそこに入った。500円という安さなのに、ご飯は追加料金なしで大盛りにできるというから驚きだ。実際にその定食を頼んだが、本当に茶碗大盛りのご飯と、500円とは思えない料理が出てきた。揚げ物もよく揚がっていた。それでいて駅近とは……。安旅の人間には大変嬉しい店だった。

 さて、20:40頃に店を出た。イリミたちは、松山駅構内の土産物屋で何かを買っていた。これからどこへ行くのかと言うと、予讃線で八幡浜まで南下し、そこからフェリーで九州の別府に渡る。そして朝から別府温泉に入るという計画だ。既に20:59発のキハ32形八幡浜行きが発車を待っていた。

 八幡浜行きの車内は、残念ながらロングシート。2時間もこれではさすがに疲れる。そのロングシートがほぼ埋まったところで、列車は松山駅を発車した。

 乗客は、駅に到着する度に列車を降り、伊予市駅より先では乗降客ゼロの駅も少なくなかった。気づけば、イリミは疲れて爆睡。ムトゥは窓を開けて涼んでいるところだった。温泉効果ですべすべになった肌を、夏の夜風がなでる。とても気持ちが良かった。

   22:53、列車は終点の八幡浜駅に到着。駅構内は閑散としており、わずかな乗客たちは、いつの間にかいなくなっていた。

 ここからタクシーで八幡浜港へ向かう。初乗り550円のアトムタクシーに乗り、数分で港に到着。運賃は710円だった。フェリーターミナルの前には、乗船を待つトラックが休んでいた。そのうち、雨がポツリポツリと降ってきた。明日の天候が心配だ。

 きっぷの発売は23:30。乗船は0時。出港は0:20。まだまだ時間があるので、その間、乗船名簿を記入したり、チラシを物色したりした。臼杵行きのフェリーで乗船が始まったらしく、何人かの乗客が改札を抜けていった。

 23:30、きっぷの発売が始まった。2等は3120円。ホテル代と移動の効率を考えると破格の安さだ。23:50には、ベルの音とともに臼杵行きのフェリーが出港した。

2009年(平成21年)8月28日(金)

 0時になり、乗船が始まった。今夜の宿は、宇和島運輸フェリーの「さくら」。奇しくも、私のハンドルネームの由来になった寝台特急「さくら」と同じ名前だ。

 2等船室はやはりカーペット敷き。乗客はあまり多くなく、1区画を3人で占領できた。1枚100円で毛布の貸し出しも始まり、早速それを利用することに。寝台特急もこの方式にすれば、使われなかった寝具を無駄にすることはないだろうに、と思う。   

 船は0:20に八幡浜港を出港。イリミとムトゥは疲れていたらしく、すぐに寝てしまった。私はすぐには寝ず、船内各所を見て回った。設備的には、珍しい物はなかったが、ラウンジやマッサージチェアなどが設置されていた。船外は真っ暗闇で、遠くに四国の町灯りがポツポツと見える程度だった。

 2等船室に戻り,自分も就寝。目覚めれば、もう九州だ。到着は3時間後だが、この便は別府港に着いても5時までは船内で休憩ができる。少ない睡眠時間を活用せねば。

 しばらくして船内放送で目覚めた。時計を見れば、4:45。もう下船時刻だ。私はイリミたちを起こしながら、下船準備を始めた。

 岸壁に降り立つ。外はまだ暗かった。イリミにとっては九州初上陸となった。

 通路を通って、ターミナルへ向かう。他の乗客は既に降りてしまったのか、ターミナル内はまばらだった。ターミナルで眠気を覚まして建物の外へ。空がだんだん明るくなってきていた。

 港からはタクシーで別府駅前に向かった。別府駅前にある「駅前高等温泉」に入るためだ。同温泉の「高等湯」では24時間営業を行っており、早朝に港に着く我々のような旅行者にとって大変ありがたい存在だ。番台のおばちゃんに入湯料100円を払い、ロッカーキーを受け取って中へ。早朝とあって他に客がおらず、ゆっくり入れた。後から1人入って来たが、ちょうど入れ替わりになった。温泉を出る際、私は記念にタオルを買った。外はもう朝の空気にすっぽりつつまれていた。

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