C美術館への道のりは長かった

わけあって、私は2007年(平成19年)9月23日発の「あかつき」に乗り込みました。

 取りあえず、「みろくの里」に行けるという道に入っていった。

 しかし、数百メートル進んでも、「みろくの里」の遊園地や美術館が全く見当たらない。本当にこの道で合っているのか?と思い、電柱を見ると「みろく」とあるから、間違いはないのだろう。

 重たい荷物を背負って歩くこと20分、交差点にぶち当たった。看板があって、どうやら右らしい。

 さらに歩くこと10分。ようやく、「みろくの里」の入り口に着いた。

 少し行くと、広い駐車場に出た。どうやら、ここはマイカー利用者向けの遊園地らしい。その先に遊園地の建物があったが、看板によると、美術館はさらに先らしい。はぁ……。

 さらに歩いて歩いて……。

 広い草地をぐるりと回りこんで、寺の門の前を通り、砂利道を通って、

 ようやく美術館らしい建物を発見!時刻は既に10:45。バスを降りたのが9:57くらいだったから、かれこれ50分近く歩いていたことになる。

 玄関には、「○○○写真展」という看板があり、本当に展示されているようだ。この写真展は、某全国紙も協力するほど巨大なもので、初めて応募して入賞できたのだから、当然嬉しかった。

 中に入り、受付でバスセンターで買ったきっぷを見せた。もともとこの美術館は、仏教や水墨画関係のものを多く展示していて、大半が中国の画家が書いた水墨画だった。中には、昔の望遠鏡もあった。これは、中国とは何の関係もないらしい。

 途中にソファがあった。休憩しても良いらしいが、なぜか分からないが、ものすごく豪華だった。美術館の規模はそれほど大きくなく、20分ほどで水墨画の展示室を出てしまった。出ると、さっきのエントランスホールだった。写真の展示は、奥のところらしい。エントランスホールと一体になった軽食堂の横を抜けると、写真展の部屋だった。手前の部屋には、一般の部の展示があった。優秀作品は、協力している新聞社にも一度掲載されていたので知っているものもあったが、大半は始めて見るものだった。そのさらに奥に、高校生の部の展示があった。ところが、順々に見ていくと、私の作品が無かった。数えてみると、入賞作品の展示数よりも少ない。ということは、私と同じく、何枚かの写真は展示されていない、ということである。これはどうしたことか、と思って、受付の女性職員の方に尋ねた。

私:あの、佐賀から来たんですけれども、今行われている○○○写真展に入賞したのですが、展示されていないのですが……。

職員さん:ええ?どういうこと?

 ということで、現場を見てもらい、電話で展示を担当した業者に確認してもらった。すると、どうやら主催者が委託した業者が画鋲不足を理由に展示をせず、そのまま帰ってしまったらしい。しかも、美術館側にそのことを何も報告していないのだ。職員さんは、「今すぐ来てください。遠くからお客さんが来ているんですから」と抗議したが、相手は「今忙しいから、午後からね。展示できなかった分は、倉庫に置いておいたから」との返答。全く、失礼な業者である。

 仕方が無いので、職員さんに探してもらった。しばらくして、重たそうなジュラルミンケースを抱えてやってきた。開いて確認すると、やはり私の作品が入っていた。この美術館に来る前は東京でも展示されていたため、写真そのものは展示用に加工されていた。しかし、こちらとしても、せっかく来たのだから、展示されているところをカメラに収めたい……。美術館の方も察して、「じゃあ、これをごめんなさいだけど、ちょっと外して……」ということで、代わりに私の作品を入れてもらった。そして、何枚かの写真を撮った。

私:撮り終わったので、外しましょうか?

職員さん:いや、そのままでいいよ。午後から業者さんが来るから。

ということで、そのままにした。これで一件落着というわけだが、45分間も歩いて、その後、このハプニングだから、どっと疲れた。改めて作品を見ていると、先ほどの女性職員の方が来て、「コーヒーが入ったよ」と言った。ん?コーヒー?そんなこと言ったっけ?と思って軽食堂―――いやおしゃれなところだったのでカフェテリアの方が良いかもしれない―――のところに行くと、テーブルの上にコーヒーとケーキが並んでいた。

私:こ、これは?

職員さん:どうぞ。食べて良いのよ。

私:あ、あのお金は……?

職員さん:あ、それはいいの。気にしないで。

 業者に落ち度があったとは言え、私が遠くから来たものだから、あまりに気の毒に思われたのだろうか。その職員さんは福岡県の大学に通っていたらしく、佐賀にもしばしば遊びに来ていたと言う。それから話は盛り上がった。ぶどうが出された。近くの農園で収穫されたものだという。見た目は酸っぱそうだったが、意外と甘かった。

 職員さんによると、この美術館は、さっきの遊園地と同じくこの近くにある造船会社の系列らしい。この美術館は会社の接待に使われるらしく、時々VIP級のお方も来るという。ソファが豪華なのはこのためだろう。

 この「みろくの里」は、遊園地のほか、映画のロケにも使用される映画村もあるという。そう言えば、今年の夏に放送されたドラマ「はだしのゲン」(フジテレビ系)でもロケ地として書いてあった。職員さんは、ポスターを見せながら、「『座頭市』のロケでは、北野監督(ビートたけしさん)は忙しいから、ヘリコプターで来た」とか、「『あずみ』の撮影では、タレントのお兄ちゃんたち(『あずみ2』なら小栗旬?)が下のスーパーに買い物に行って、大騒ぎだったらしいよ」という秘話を話してくれた。この時、私1人だけが美術館の来館者だったのだが、職員さんによると午後から増えるらしい。理由は、午前中に美術館で遊んで、午後からこちらに人が移動してくるからであるそうだ。納得である。

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