@お別れ乗車

今年春に廃止予定の寝台特急「あかつき」の乗車と同じく廃止予定の島原鉄道の再訪を兼ねた旅です。

 昨年5月、私は長崎→佐賀間で「あかつき」のレガートシートに乗車したが、その逆である佐賀→長崎間で乗ったことは、一度もなかった(佐賀→肥前山口間は、2回ほどあったが・・・・・・)。いつか乗りたいと思っているうちに、2008年(平成20年)春のダイヤ改正をもって寝台特急「あかつき」の廃止が発表された。しかし、なかなか乗りに行く時間がなかった。たまには暇な時もあったのだが、今度はお金がないという状況に・・・・・・。また、週末になるとレガートシートそのものが満席になる場合もあり、乗る機会がどんどん狭められていった。

 年が明けた2008年(平成20年)1月20日(日)。ついに時間とお金、それに指定席の三者の条件がそろい、ようやく出発することができた。指定席については、2週間ほど前から1月19日(土)か20日(日)のどちらかで目星をつけていたのだが、19日の方は早々と席が埋まっていたので、20日を決行日とした。また、せっかく長崎まで行くのだから、と、同じく今年春に廃止される島原鉄道島原外港―加津佐間の再乗車も行うことにした。出発前日に佐賀駅できっぷを買った。今回もナイスゴーイングカードを使った。もちろん、レガートシートは普通車指定席扱いなので、割引が適用された。

 翌朝は5:50に起床して出発した。市内はまだ真っ暗で、走る自動車も少なかった。自転車を駐輪場に停め、2番ホームへ。

 6:52、ED76形92号機に牽引された寝台特急「あかつき」が入線した。今回の旅は、「あかつき」最終乗車と位置づけているので、自分のビデオカメラを持参した。とはいえ、このビデオカメラは10年以上前のSONY製で、重量もサイズも最新型ビデオカメラの2〜3倍はあるだろう。でも、まだ使えるので、新たに買う予定はない。

 私の指定席は、進行方向右側だった。ということは、有明海とは反対側になる。だが、レガートシートにはミニロビーがあるので、海のそばを走るときは移動すれば良いことだ。レガートシート車内は多くの座席が埋まっていたものの、女性専用席を中心に空席が目立った。レガートシートは、高速バスの座席を模しているそうだが、大きな違いは常に乗務員の目が行き届くかどうか、つまり、防犯上の点である。車掌室は、レガートシート車のすぐ隣の車両にあるが、いくつかのドアで隔てられており、何かあったときの対応ができない。また、一般席と構造上は同じ部屋の中にあり、仕切りといっても半透明の板しかないので、女性にとって利用にしくい。レガートシートが登場した当初は、女性専用席を設置するだけの理由があったのかもしれないが、ここまで車内の治安が悪くなると、これだけの設備では、不十分であろう。

 肥前山口駅で、数人の客が下車した。同駅を発車する頃には、建物の輪郭がはっきりと分かるくらいまでに明るくなっていた。次の肥前鹿島駅に着く頃には、空もだいぶ白くなっていた。肥前鹿島駅でも、5、6人ほどの客が降りていった。

 肥前飯田駅を過ぎると、進行方向左手には有明海が広がった。だが、外は雨で見晴らしはあまり良くなかった。しかし、独特な雰囲気がある雨の車窓というのも、嫌いなわけではない。

 小長井駅を通過した後、テールマークから置物まで、いろいろと車内の撮影を行った。

 諫早駅では、大きなリュックを背負った人が何人も降りていった。中には、三脚らしきものを持った人もいた。おそらく、島原鉄道に乗りに行く方々だろう。諫早駅を発車した後、列車は市布駅と現川駅で追い越しと待避を行った。

 列車が長崎トンネルを抜けた。長崎もやっぱり雨だった。路面電車と少し併走し、浦上駅を通過すると、減速を始めた。定刻の8:53に終点の長崎駅に到着した。駅で待っていた人も乗客も、早速列車の撮影を開始した。

 一方、最後尾では回送に向けた準備が進められていた。DE10形1756号機が近づいてきて、客車と連結した。連結作業が終わると、機関車を繋いだまま、一旦浦上寄りの留置線まで回送された。

 留置線まで引き上げると、まず、機関車が切り離され、所定の位置で停車した。その後、客車もDE10形から押される形で回送された。

 作業が終わると、DE10形が客車から切り離された。本当はもっと作業風景を見たいところだが、この後も計画があるので、撤収作業を開始した。ホームの売店では、9個ほど入ったみかんがわずか100円で売られていた。食費はあまり多く持ってきていなかったので、このみかんを昼食にすることにし、1袋買った。

 ぎりぎりのタイミングではあったが、長崎まで乗ることができて良かったと思う。「あかつき」の廃止に関し、佐賀新聞や朝日新聞の投稿欄には、「どうして、ゆったりした旅を奪うのか。選択肢として残すべきだ」「JRの効率化のために廃止するのは、納得できない」「寝台特急の活用ではなく、長崎新幹線の建設ですか」と、惜しむ声や、合理化や長崎新幹線に絡んでJRを厳しく非難する意見が、男女老若を問わずあがっている。特に、長崎本線沿線住民にとっては、長らく親しまれてきた「ブルートレイン」が完全に撤退してしまうという、ある意味でショッキングな出来事である。一方で、不必要な新幹線計画を進めるという矛盾した状況を抱えている。「あかつき」の廃止に関して、「やっぱりおかしいんじゃないの?」とJRや長崎新幹線計画を疑問視する意見が出るのは、至極当然のことであろう。

 長崎駅前電停から赤迫行きの360形に乗り、浦上駅前電停で下車した。思ったよりも早く着いたので、しばらく路面電車を撮影することにした。15分ほどの間に、1800形や1700形、300形、500形を撮影できた。

 浦上駅の近くでは、観覧車のようなものを付けたビルが建設中だった。このあたりの景色もだんだんと変わっていくのだろう。

  浦上9:58発の817系諫早行きに乗車した。補助席ながら、何とか座れた

 電車は、定刻の10:28に諫早駅に到着した。今回も、前回(「長崎路面電車まつり&島原鉄道全線制覇の旅」)と同様に、学生だと列車、バス、フェリーが1000円で全線乗り放題になる「スクール1000」を利用し、諫早駅前―加津佐駅前間を島鉄バス、加津佐―諫早間で列車を使うことにしている。諫早駅の券売機できっぷを買い、少し歩いて諫早駅前バスセンターに到着。10分ほど待つと、雲仙行きのバスが入ってきた。片側2ドアかと思っていたら、トップドアタイプだった。座席の座り心地は良く、リクライニング装置も付いていた。私は、一般の路線バスでリクライニング装置が付いているバスに初めて乗った。バスは定刻の10:40にバスセンターを発車し、雨の諫早市内を走った。

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