D広島ローラー大作戦その2

春と言えば鉄道旅行。そこで、今回は、広島や京都など“四都”を走る鉄道を旅しました。

 原爆ドームや紙屋町付近で電車の撮影をしようと思ったが、もう薄暗くなってきており、難しそうだったので、広電の乗りつぶしを再開することにした。紙屋町電停から電車に乗るために、紙屋町交差点方面に向かった。すると、近くの道路から選挙カーが登場し、「○○、○○をよろしくお願いします」と拡声器で連呼した。当時行われていた広島市長選の新人の立候補者らしい。そして、紙屋町交差点付近で演説を始め、手始めに現職市長の平和事業を「市民の税金で何度も外国に行くとは、金の無駄遣いだ」と痛烈に批判。そして、通りを走る広電の電車を指差し、「この4年間で、皆さんの利用する路面電車は何も変わっていません!」などと、現職の広電に対する施策も批判していた。

 私は広島市長選についてよく分からないが、この候補者の「この4年間で、皆さんの利用する路面電車は何も変わっていません!」という発言は、ちょっと理解しがたいものだった。広電は民間会社であり、広島市とは直接関係がない。公営交通機関でない以上、民間会社を動かすのは非常に難しい。計画されている広電のルート変更も引き合いにして現職を批判していたが、これは、4年や8年では到底できない話で、何だかよく考えないで当てずっぽうに批判しているようにも感じた。

 よく考えてみれば、紙屋町交差点と外国人がたくさん訪れる原爆ドーム(しかも世界遺産!)は、目と鼻の先である。こんなにやかましい世界遺産の地というのも世界的に珍しいのではないか。そのような場所で、ぎゃんぎゃん演説されていては、広島市のイメージダウンだ。外国人も、日本の選挙のやり方に、「日本ノ選挙、狂ッテルネ」と、さぞ眉をしかめたことだろう(このような配慮のない候補者が当選したら、広島市はどうなるのだろう・・・と、広島市に住んでもいないのに思っていたが、結果として現職が勝利した)。

 紙屋町電停でデジカメを構えながら電車を待っていると、優しそうな顔をした初老の男性が、「電車は撮れますか」と声を掛けてきた。

私:はい。今日は1日乗車券で、広電に乗りつぶそうと思っています。

初老の男性:最近、新しい電車が入ってね。あの白い電車。グリーンムーバーマックスだったかな。今年あたり、また増えるって聞いたけど。

私:あ、そうなのですか。グリーンムーバーマックスは、一度乗ったことがありますよ。

初老の男性:あぁそうなの。あの被爆電車・・・650形はもう撮りましたか。

私:ええ、去年の冬に、車庫に特別に入れてもらって、撮影しました。今でも朝夕のラッシュでは走っているのですよね?

初老の男性:う〜ん。この大通りの路線では走っていないみたいだけどね。

 そう話していると、広島駅行きの5100形(グリーンムーバーマックス)が入線した。私と初老の男性は、お互いに会釈をしながら電車に乗り込んだ。

 八丁堀電停で下車した。ここから白島線に乗り換えて、同線の制覇をしようと思っている。

 横断歩道を2回渡って、白島線の八丁堀電停に移動した。その間に、今まで乗ってきた大通りの方の電車は、何本も走り抜けていった。

 まもなく、1900形(元京都市電)の電車が入線した。この電車が折り返しで白島行きとなる。

 帰宅ラッシュなので、思っていた以上に乗る人は多かったが、立ち席はそれほど多くなかった。約5分ほどの乗車で終点の白島電停に到着した。これで白島線制覇である。残るは、皆実(みなみ)町六丁目―広島港(宇品)間となった。

 夕暮れの電車は、ゴトンゴトンとゆっくりとした速度で広島の街を走って行く。

 白島線は、広電の中では地味な存在であるが、私は広電の中で一番路面電車らしい雰囲気のある路線だと思う。途中で元大阪市電の900形とすれ違った。白島線は、古い車両が活躍する路線でもあるようだ。

 八丁堀電停からは、徒歩で撮影ポイントに向かう。撮影ポイントとは、胡町―銀山(かなやま)町間にある歩道橋である。徒歩5分ほどで歩道橋に到着した。歩道橋のすぐ下を、グリーンムーバーマックスが走り抜けた。

 雨が降ってきたので、撮影を15分ほどで切り上げ、銀山町電停から電車に乗り、次の的場町電停で下車した。ここから広島港行きの電車に乗るためである。比較的運転間隔の短い広電にしては珍しく、広島港行きの電車(1900形)は、10分ほど待ってやっと来た。

 こちらの車内も、帰宅途中の通勤客がたくさん乗っており、しばらく立つことになった。30分近くもかかって、ようやく終点の広島港(宇品)電停に到着した。これで、広電電車の全路線を制覇したことになる。

 広島港電停は、電停と言うよりも鉄道線の“駅”と呼べるほど立派なものだった。電停の隣はフェリーターミナルで、水銀灯に照らされた海もホームから少し見えた。電停構内には、5100形グリーンムーバーマックスや元大阪市電の760形が停車していた。5100形は、広島駅行きだったので、乗り込もうと思っていたら、よく見ると“紙屋町経由”になっていた。つまり、かなり大回りする系統である。

 最短ルートを走る5系統広島駅行きは、800形だった。ドアが開いてすぐに乗ったので、運転席のすぐ後ろの座席に座ることができた。

 電車は、4人ほど乗ったところで広島港電停を発車した。

 途中から再び雨が降り出した。昼間にあまり降らなかったから良かったが、明日も降るとなるとちょっと心配である。

 19:45、広島駅に到着した。20:02発の下関行きに間に合ったので良かった。この電車に乗らないと、厚狭駅まで戻って新大阪行きの夜行快速「ムーンライト九州」に間に合わないのである。

 構内の売店で弁当を買い、1番乗り場に停まっていた115系快速「通勤ライナー」下関行きに乗った。車内は、通勤用の割にはいくつかの座席が空いていた。

 発車を待っていると、隣に女性が座った。さすがに隣に他の人が座っていて、弁当を広げるわけにはいかない。しばらく我慢である。発車間際になって、改札口からサラリーマンたちが何人も突進してきた。車掌さんが発車の笛を吹いても、2、3人が飛び乗ってきた。電車が動き出した後も何人かが走ってきていたが、諦めて別のホームに向かっていた。隣の女性は、途中の駅で下車した。それからちょっと遅めの夕食となった。

 途中、新山口駅で遅れが出た。発車直前に、中年の女性が乗ってきて、近くの女性グループに合流した。すると、開口一番、「この電車を遅らせたのは私なんよ。ごめんなぁ」。話を盗み聞き(もっとも、聞きたくなくても聞こえるくらいの大きな声だったので・・・)したところ、その人は山口線山口駅で列車に乗り遅れたので、駅員さんと相談した結果、次の列車で新山口駅に向かい、本来は接続しない下関行きに待ってもらったというものであるようだ。実は、この女性グループも、私と同じく新大阪行き「ムーンライト九州」に乗るらしく、確かにこの電車に乗らないと、大事になる。と言うのも、新大阪行き「ムーンライト九州」は、厚狭駅停車を最後に、翌朝の岡山駅まで客扱いがないのである。

 電車は、4分ほど遅れて山口県の厚狭駅に到着した。

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